文責:桑原康平(サウル)
パレスチナ映画祭「Palestine Cinema Days: Around the World 2025」は、パレスチナへの連帯を示すために文化的な抵抗運動としてFilm lab Palestineが世界各地に呼びかけ、11月2日のバルフォア宣言の日に合わせて世界各地でパレスチナ映画の上映会が行われました。


※Filmlab Palestine作成
会場となった東京聖テモテ教会では、翌11月3日(月/祝)17:30~20:30に教会聖堂にて「The Dupes/太陽の男たち」(1972年、107分)を上映し、ゲストスピーカーとして飯野真理子(国際NGO広報アドバイザー)さんをお迎えして開催することができました。上映会参加者はボランティアスタッフを合わせて約60名、その後の講演にも約40名の方が参加しました。

日本での映画祭企画を中心となって担ったアパルトヘイトフリーゾーン・ジャパン(AFZJapan)は、今回の映画祭のために4本の映画に日本語字幕を付けてくれました。その中からゲストスピーカーの飯野さんからのおススメもあり、ガッサーン・カナファーニ―原作の「太陽の男たち」を上映することになりました。
この作品は1972年(原作は1963年)作でありながら、現在のパレスチナ問題の本質、「パレスチナの人びとの声を聴いているのか」というメッセージを変わらずに伝えています。それはこの作品が普遍性を持ったものだからでもありますが、半世紀以上経っても問題が改善するどころか深刻になっているからでもあります。
この問題をパレスチナ人とユダヤ人の人種の問題、イスラム教とユダヤ教の宗教の問題、パレスチナとイスラエルの政治の問題に矮小化せずに、力を持った国々が能動的に加担することで継続している問題であり、日本も中立的な存在ではないという認識に至れるのか、それがこの作品のメッセージ、「パレスチナの人びとの声を聴き、その叫びに応えているのか」ということではないのかと思っています。

上映会後に行われた飯野さんの講演も好評で、今のパレスチナの市民の声、現状、これまでの歴史、映画の原作者ガッサーン・カナファーニ―の紹介まで、飯野さん自身の経験と想いも交えてお伝えいただきました。
映画の結末そのものは決して気持ちが軽くなるものではありませんでしたが、飯野さんの講演も相まって、歴史とパレスチナの人びとが置かれている現状も踏まえ、私たちがパレスチナのために何ができるのか行動を求められるものでした。
まずはパレスチナ問題を知ること、そして伝えること、さらに今回の共催団体であるアパルトヘイトフリーゾーンの場を増やしたり、その場に参加することもその一助かもしれません。
なお映画は通常の配信をされていないようですが、原作の小説は日本語翻訳もされ、現在も購入可能です。結末が気になる方はぜひお読みください。
以下、参照:
●上映映画:「The Dupes/太陽の男たち」
(1972年、107分、タウフィーク・サーレフ監督)
パレスチナを代表する作家、ガッサーン・カナファーニーの傑作「太陽の男たち」を映画化。クウェートへ出稼ぎに行くため、給水車のタンクに隠れて密入国しようとするパレスチナ難民の男たち。国境超えの際、のらりくらりとした官僚に時間を取られ、灼熱の沙漠でタンクの中の温度は上がる。助けを叫ぶパレスチナ人の声は、タンクの外に届かない。1968年に書かれた作品が、50年以上経つ今でも強烈なメッセージを放つ。
●原作小説:「ハイファに戻って/太陽の男たち」
(ガッサーン・カナファーニー 著、黒田寿郎 訳、奴田原睦明 訳)
ハイファに戻って/太陽の男たち :ガッサーン・カナファーニー,黒田 寿郎,奴田原 睦明|河出書房新社
●ゲストスピーカー:飯野真理子(国際NGO広報アドバイザー)
学生時代に中東シリアへ留学。NHKでディレクターを務め、平和・共生・対話をテーマに、世界中を取材し番組制作。現在は子ども支援の国際NGOで広報アドバイザーを務める。世界各地での取材経験を踏まえた講演や、平和の視点から見た分野横断的な学び、和解・尊厳などに関する講座を行っている。
主催:Filmlab Palestine | Filmlab:Palestine
共催:日本聖公会東京教区外濠教会グループ協議会/AFZ Japan(アパルトヘイト・フリー・ゾーン ジャパン) パレスチナ映画祭2025
協力:一般社団法人カンパニア、NPO法人セブン・ジェネレーションズ
